2016年5月12日木曜日

CBS Radio Mystery Theater  [The School Mistress]

第百三十四話 

メモの日時;1983年10月3日(月)
タイトル: [The School Mistress]
Episode;1390

アントン・チェホフの短編を脚色した作品。とはいうものの、チェホフのThe School Mistressには殺人と言ったシーンはないように思うのだが、それはそれとして、このラジオドラマでは、殺された人物の身元確認に赴く女教師と橇(そり)の馭者の会話から始まる。
場所はモスクワを遠く離れた寒村。橇の馭者であるセミヨンは女教師マリアのもとを訪れ、警察に赴くため迎えにきたと告げる。目的は殺人事件の被害者の身元確認のため。被害者は顔が半分銃で潰されており身元がわからないが、どうもマリアが付き合っていたセルゲイ・ハノフのようである、と。セルゲイ・ハノフがこの村に住んでそれほど長くないので、マリアだけが頼りのようである。
被害者がセルゲイ・ハノフでないことを祈りながら警察に向かう道すがら、セルゲイは働くこともなくチェスなどを楽しむ無為の生活をしているとセミヨンはセルゲイにいい印象はもっていない。また、犯行はお金目的ではないとの警察の見解などを話すセミヨンに少し黙るようにとマリアは願い、セルゲイと最初に会った時のことを思い起こす。セルゲイはボランティアでおこなっている学校の試験審査官(examiner)としてマリアの前に現れ、彼女はその魅力に惹かれていたのである。

警察署に到着し心を落ち着けるため少し休息し、ついに身元確認。セルゲイ・ハノフが左耳につけていた黄金のイアリングが決め手となり被害者はセルゲイ・ハノフであると判明。失意のマリアは気を失う。気を失ったマリアは夢で、母親を肺炎で亡くしたこと、そして父との会話で勉強し教師となることなど昔のことを想い起す。
気を取り戻したマリアは署長室で休息。夢で見た両親のことなどをセミヨンに話す。セミヨンは警察署のある市庁舎に月に一度給料をもらうために学校から町までマリアを橇ではじめて送ってきたことなどを話すが、マリアはセルゲイには教師と試験官という立場でその前に会っていたことを告げる。署長室で休息をしながらセミヨンとともにセルゲイに会った日のことを回想する。
教師となって13年、何の変化もない単調な日々。月に一度市庁舎に来る道すがらの細々したあれこれなどもすべて覚えている。そんな時に現れたのが村で唯一の四頭立ての馬車に乗る地主階級の魅力的な男性セルゲイ・ハノフ。試験監督官としての彼に学校の粗野な使用人に対するクレームを2年も訴えているが何の進展もない、といった会話などをとおし、マリアは益々セルゲイ・ハノフに惹かれてゆく。
セミヨンは教育委員会の試験監督官といっても年に一度の仕事。後は無為に過ごすだけのセルゲイを認めず、対抗心からか、勇気を示すため無謀な道を進みマリアをずぶぬれにし怒らす始末。そんなことを想い起すも、回想から覚め、セルゲイが亡くなったという現実に前途を悲観する。
再びマリアの回想。踏み切りで立ち止まっているときにセルゲイからハンカチを渡させるなど紳士的な振る舞いに一層惹かれてゆく。また彼の女心を惑わすような、一度の過ち、すなわち彼には妻がいるのだが、病弱のため療養生活を送っているといったことを話し、その後二人の付合いがはじまる。そんなマリアを案じ、またセルゲイへの嫉妬もあり馭者のセミヨンはセルゲイ・ハノフの家に訪れ、モスクワに住む兄弟に調べてもらったセルゲイの既婚の事実などを伝え、マリアに近づかないようにを求める。セルゲイは既婚の事実はマリアも知っていることと反論。自分のことを調べるスパイ行為に激昂し、今後彼女に不都合なことを話したり、無断で訪れた時は銃で殺す、と伝える。
場面はマリアの誕生日。セルゲイは食事を準備し、食卓での会話でセミヨンが不都合なことをしていないかなどと尋ねる。マリアはセミヨンを自分のことを守ろうとしてくれているだけだと言うが、セルゲイはマリアを守るのは自分であると述べ、いつの日か結婚しようと口にする。そして二人の幸せのために、とのセルゲイの言葉に、マリアは三人の幸せ、と告げる。彼女はセルゲイの子供を宿していた。驚き、平静を装うセルゲイ。セルゲイはこの事実を誰も知らないことを確認する始末。彼はマリアと結婚するつもりなどなかったようである。
回想は終わり、事件は馭者のセミヨンの犯行、と。セルゲイの妻は既に亡くなっており、その事をマリアに知らせない彼の不実が犯行の主因のような会話が警察署長との会話から窺える。ひょっとしたらマリアにその事実を知らせ、彼女の気持ちを忖度した犯行のようにも思える。
セルゲイの子を宿したマリアは村を離れ、モスクワに。娘には父は勇敢な兵士として亡くなったと告げることになる、といった余韻を残し物語は終える。

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