2016年6月8日水曜日

CBS Radio Mystery Theater  [[The Visions of Sir Philip Sidney]

第百三十九話

メモの日時;1983年10月10日(月)
タイトル: [The Visions of Sir Philip Sidney]
('M. R. James story')
Episode;1315


話は99年前に遡る。南アフリカのズールー戦争に従軍し、武勲をたて勲章まで授与された Sir  Philip Sydney(Sirの称号はその時の武勲故のものだろう)。何時ものようにロンドンエクスプレスに乗り貿易商の仕事のためにロンドンに向う。
客室で葉巻をくゆらせていると、喫煙の苦情を言われた青年が相席を求める。四方山話の末パディントン駅に着き、青年が客室を離れるとドアに血痕の跡。驚いて後を追うも見失う。
フィリップは 友人のスコットランドヤード刑事ピーター・.グレムを訪ね、事件を報告。警察はその話の確認をするも、そんな事件の報告はどこにも上がっていなかった。
その翌日。同じく客室に黒いベールを纏った夫人が現れる。容姿は彼の妻であるマーガレットによく似ている。そして今回も彼女が客室を離れると血痕跡。次の日も紳士風の男性が相席し、この時も血痕を残す。直前に検札に来た車掌に問い質すも、そんな紳士はいなかったと語り、また夫人も青年も客室にはいなかったと伝える。

週末に スコットランドヤードの主任警部はピーターの自宅を訪問。夫人のマーガレットにフィリップに起きた出来事を伝える。南アフリカでのズールー戦争の大虐殺の戦役に遭遇した精神的ショックの後遺症とも考えるが、それにしては時が立ち過ぎている、と。
その時、夫人は自宅にゲストを迎えていると話す。夫人もズールー戦争当時、南アフリカに赤十字の一員としておもむいており、そのとき知りあった青年で、ロンドンに戻り陸軍省に務めることになっているのだが、部屋が見つかるまでゲストとして招待している、と。しかし、フィリップを快く思っていない。
その青年トレバーが警部に話したところによると、二人の関係に対する謂れのない強い嫉妬の他、フィリップがトレバーを嫌悪する理由は戦時下におけるフィリップの行動が勲章授与に価しない事実を知る唯一の証人であるためである、と。トレバーも将校としてその戦役に参軍し生き残った軍人であった。

警部はこれらの話から、フィリップの見た最初の青年はトレバー、二人目は夫人のマーガレット、三人目は警部自身(客室の会話の中で、スコットランドヤードの話が出ていた)の幻影。そして次の血痕を残す幻影はフィリップとなるとの推論を述べる。
そんな折もおり、庭で争いの声。マーガレットに危険であるから家を離れるようにと話すトレバーのもとにフィリップが現れ銃を放つ。嫉妬と秘密を知るトレバーに対する嫌悪がない交ぜになった結果である。その結果3人が怪我をする。誰々かというのははっきり説明されてはいないように思うのだが、論理的に考えればトレバー、マーガレット、そして刑事のピーターの3人ではあろう。
警部の話によると、精神分析医の見立ては、フィリップの予知能力が(あまりの嫉妬か嫌悪か、なにかのきっかけにより)高まり、この銃による怪我の血痕を客車で見たのであろう、と。また、黒いベールを被った女性のそのベールは葬儀の象徴であり、それはフィリップを弔う予知でもあったよう。フィリップはこの事件、予知によって見た幻影を乗り越え、マーガレットの愛を信じ生きていくようになる。

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