2013年9月2日月曜日

CBS Radio Mystery Theater  [Mayerling Revisited]


メモの日時;1983年7月27日(水)
タイトル: [Mayerling Revisited]
Episode; 0648


タイトルのMyerlingとはオーストリアの首都ウイーン郊外の街。この街の名はオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッセラが不可解な情死を遂げたマイアリング事件で知られる。マイアリング事件とは、すでに妻子のあるルドルフ皇太子がマリー・ヴェッセラとの結婚を父であり、強圧的なオーストリア・ハンガリー帝国の国王フランツ・ジョーゼフに拒否され、それを悲観してマリー・ヴェッセラと共に死を選んだ事件ではあるが、真相は未だ解明されていない。一説には自由主義思想に傾倒したルドルフ皇太子は暗殺されたとも言われる。この物語は、マイアリング事件をベースに展開する。
事件の起きた1世紀後のマイアリングでの物語。アメリカ人の若き女性キティ・スコットはオーストリアで出会った青年デイビットと恋に陥る。デイビットは財閥の御曹司、キティは普通の家庭に生まれた教師。二人の結婚に対し、デイビットの父親はそれを拒否。キティはふたりの関係とルドルフ皇太子とマリーの関係を重ね合わせる。強権的な皇帝と財閥のオーナー、親の操り人形と自嘲する皇太子と父親と抗する気持ちの弱いデイビット。皇太子とマリーが知り合って情死を遂げるまで3か月、キティとデイビットが知り合って今に至る期間とも一致する。
そうするうちに、キティはルドルフ皇太子とマリー・ヴェッセラの「声」を聴くようになる。また、その姿さえも「見る」ようにもなってゆく。キティはそのことを、実現できなかった二人の人生を全うできるようにとのメッセージとも考えるようになる。
ある日デイビットの父親からの面会の電報。時刻は3時、キティひとりと話をしたいと。このことも、ルドルフ皇太子が父の王に独り呼びだされ、結婚を拒否された時刻と一致する。で、キティの面談もルドルフ皇太子が父との面会の直前、母親から優しく接されたと同じく、デイビットとの母親から優しくも、実業家としてその後に待ち受けるデイビットとの厳しい人生を示され、そしてその後現れた父親からの強圧的な「拒否」で終わる。
嘆くキティ。マイアリング事件では、すべてを失うことを恐れたルドルフは死を選ぶが(ブルガリア王国との何らかの関係に一縷の望みを抱いていたようだが、十分に聞き取れなかった)、この物語はデイビットが明日キティと結婚するとの強い決意で話を終える。自分の意思を放棄したルドルフ皇太子とは異なり、キティの「見聞き」したルドルフ皇太子とマリー・ヴェッセラの行動は、キティではなく自分に示されたメッセージとしてデイビットは自分の意思である「結婚」を貫く。そのことが、ルドルフ皇太子とマリー・ヴェッセラが全うできなかった人生を遂げるべく、デイビットとキティに託したものであった。

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